高校生のいじめは、小学生や中学生のいじめとは異なる特徴があります。暴力や露骨な嫌がらせよりも、人間関係を利用した精神的ないじめやSNSを利用したいじめが増え、学校だけでは実態を把握しにくいケースも少なくありません。
本記事では、高校生のいじめの特徴、なぜ発見が遅れやすいのか、近年増加しているネットいじめの実態などについて解説します。
高校生のいじめが小中学生と違う理由
高校生になると、心身ともに成長し、自立心も強くなります。一方で、友人関係や恋愛、進学、部活動など、人間関係がより複雑になる時期でもあります。
小学生では「からかい」や「仲間外れ」、中学生では悪口や無視が中心となることが多い一方、高校生では表面的には普通に接しているように見えても、水面下で孤立させたり、SNSで誹謗中傷を行ったりするケースが増える傾向があります。
大学生への回顧調査でも、高校段階では「本人のいない場所で悪口を言う」「冗談を装って傷つける」「仲良しグループから排除する」といった精神的ないじめの見聞体験が多く報告されています。
教員の前では普通に接しながら、放課後やSNS上だけで嫌がらせを続けるケースも珍しくありません。
高校生に多いいじめの特徴

高校生のいじめには、次のような特徴があります。
悪口、陰口、無視、仲間外れなど、相手の精神的苦痛を目的とする行為が中心になります。
クラスやグループ全体で距離を置き、一人だけ孤立させるケースがあります。
LINEやInstagramなどを利用して、学校外でも嫌がらせが続くことがあります。
先輩後輩の立場を利用し、不当な命令や精神的圧力を加えることがあります。
交際や失恋、人間関係をきっかけに悪口や孤立へ発展することがあります。
成績や進路を理由に嫉妬や嫌がらせが行われることもあります。
高校生になると暴力がなくても、日常生活全体を通して精神的に追い詰めるケースが増えることが特徴です。
「冗談だった」は通用しません
高校生同士では、「冗談だから」「みんなやっていた」「本人も笑っていた」という言い訳がされることがあります。
しかし、被害者が精神的苦痛を受けている以上、それは単なる遊びではありません。いじめ防止対策推進法でも、被害児童生徒が苦痛を感じているかどうかが重要な判断基準となっています。
SNS・ネットいじめの深刻化
高校生のいじめで近年特に問題となっているのが、SNSやインターネットを利用したいじめです。
スマートフォンの普及により、学校が終わった後も人間関係が続くようになりました。そのため、自宅に帰っても精神的な負担から逃れられないケースがあります。
大学生への調査でも、高校ではLINEグループから外す行為や、本人と分かる形でインターネット上へ悪口を書き込む行為などが多く見聞されており、学校段階が進むにつれてSNSを利用したいじめが目立つようになることが示されています。
よくあるネットいじめ
- LINEグループから突然外される
- 既読無視を集団で行う
- Instagramで悪口を投稿する
- 匿名アカウントで誹謗中傷する
- 本人しか分からない内容で悪口を書く
- 写真や動画を無断で拡散する
- フォロー外しやブロックを繰り返す
これらの行為は一つ一つを見ると小さな出来事に思えるかもしれません。しかし、継続的に行われることで被害者に大きな精神的負担を与え、不登校や退学、自傷行為につながる危険性もあります。
なぜ高校生のいじめは発見されにくいのか
高校生になると教師との距離が小中学校よりも遠くなり、ホームルーム以外では生徒同士だけで過ごす時間も増えます。
また、高校生は「先生に相談しても変わらない」「周囲に知られたくない」「進学に影響するのではないか」と考え、一人で抱え込む傾向があります。
さらに、SNS上のやり取りは学校から確認しにくく、被害者自身が証拠を残していなければ実態の把握も容易ではありません。
そのため、高校生のいじめでは早期発見よりも、日頃から相談しやすい環境づくりと証拠を適切に残すことが重要になります。
高校生のいじめが起こる主な原因
高校生のいじめは、単純に「性格が合わない」「嫌いだから」という理由だけで起こるものではありません。思春期特有の心理や集団生活、進路への不安、SNSの普及など、複数の要因が重なって発生することが少なくありません。
高校ではクラスだけでなく、部活動やアルバイト、SNSなど人間関係が広がるため、一度トラブルが起こると学校外にも影響が及びやすいという特徴があります。
グループから外れたくないという心理から、周囲に合わせていじめへ加担するケースがあります。
成績、恋愛、容姿、部活動などへの嫉妬が原因となることがあります。
学校外でも人間関係が続き、誤解や悪意が広がりやすくなっています。
高校生は精神的にも大人へ近づきますが、その反面、自尊心が傷つきやすく、周囲からの評価を強く気にする年代でもあります。そのため、小さなきっかけが深刻ないじめへ発展することがあります。
高校生のいじめにおいて学校が取るべき対応

いじめ防止対策推進法では、学校はいじめを認知した場合、速やかに事実確認を行い、被害生徒を保護し、再発防止に取り組むことが求められています。
高校生であっても、「本人同士で話し合えば解決する」「高校生だから自分たちで解決できる」と判断して放置することは適切ではありません。
学校が優先すべき対応
- 被害生徒の安全確保
まずは安心して学校生活を送れる環境を整えます。必要に応じて席替え、クラス変更、部活動の配慮なども検討されます。
- 事実確認
加害生徒だけではなく、周囲の生徒や教職員からも事情を聞き取り、客観的な事実を整理します。
- 証拠の確認
SNSの画面、動画、写真、録音、メッセージなどを確認し、客観的資料をもとに判断します。
- 再発防止
被害者・加害者双方への指導だけでなく、クラス全体や部活動への指導も重要になります。
高校生のいじめでは「見えないいじめ」が多いため、本人の話だけで終わらせず、客観的証拠を確認することが重要です。
保護者ができること
高校生になると、保護者へ悩みを打ち明ける機会は小中学生より少なくなる傾向があります。そのため、保護者が異変に気付くことが早期対応につながります。
このような変化はありませんか
- 学校へ行きたがらなくなった
- スマートフォンを見るたびに表情が暗くなる
- 急に友人の話をしなくなった
- 食欲や睡眠に変化がある
- 部活動を辞めたいと言い始めた
- 持ち物が壊されたり無くなったりする
- 原因不明の体調不良が続く
これらは必ずしもいじめとは限りません。しかし、複数当てはまる場合には、一度学校へ相談することを検討した方がよいでしょう。
「高校生だから親は口を出さない方がいい」と考える必要はありません。
本人の意思を尊重しながらも、安全確保を最優先に対応することが重要です。
証拠を残すことが解決への第一歩
高校生のいじめは精神的なものが多く、後から証明することが難しい場合があります。そのため、被害を受けた際には証拠を残すことが重要です。
スクリーンショットを保存し、送信日時も分かる状態で保管します。
暴言や脅迫がある場合は録音が有効となる場合があります。
日時、場所、相手、内容を時系列で記録しておきます。
壊された持ち物や落書きなどは撮影して保存します。
危険のない範囲で現場の状況を撮影できれば有力な証拠になります。
目撃者がいる場合は、後日確認できるよう整理しておきます。
学校へ相談する場合も、客観的資料があることで事実確認が進みやすくなります。また、教育委員会への相談や法的手続を検討する場合にも重要な資料となります。
証拠は一つだけではなく、複数を組み合わせることで信用性が高まります。
学校だけで解決できない場合もあります
学校は教育機関であり、必ずしも法的な紛争解決機関ではありません。そのため、学校が適切な対応を行わない場合や、重大ないじめであるにもかかわらず十分な調査が行われない場合もあります。
そのような場合には、教育委員会への相談、第三者委員会の設置要請、内容証明郵便による通知、弁護士や行政書士などの専門家への相談を検討することも有効です。
特に高校生のいじめは、進学や就職にも影響する可能性があるため、「卒業まで我慢すればよい」と考えず、早期に対応することが重要です。
高校生のいじめを改善するために必要なこと
高校生のいじめをなくすためには、「加害者を処分すること」だけでは十分ではありません。いじめが起こりにくい学校環境を整えること、被害生徒が安心して相談できる体制を構築すること、そして周囲の生徒がいじめを止められる雰囲気をつくることが重要です。
大学生を対象とした回顧調査でも、高校段階では露骨な暴力よりも、悪口や無視、仲間外れ、SNSを利用した精神的ないじめが多く見聞されており、従来とは異なる対応の必要性が指摘されています。
学校全体で取り組むべき改善策
- 相談しやすい環境づくり
担任だけではなく、学年主任、養護教諭、スクールカウンセラーなど複数の相談窓口を設け、生徒が相談相手を選べる環境を整えることが重要です。
- SNS教育の充実
ネットいじめは学校外でも継続するため、情報モラル教育だけではなく、SNSの法的責任や投稿が与える影響について継続的に学ぶ機会を設ける必要があります。
- 傍観者を減らす教育
いじめは加害者と被害者だけの問題ではありません。見て見ぬふりをする傍観者を減らし、相談や報告ができる学校文化を育てることが重要です。
- 定期的な実態調査
匿名アンケートや個別面談を定期的に実施し、表面化していないいじめも把握できるよう努めることが望まれます。
いじめは法的問題となる場合があります
「高校生同士だから」「学校の問題だから」と考えられがちですが、いじめの内容によっては法律上の責任が生じる場合があります。
暴力を振るった場合には刑事事件となる可能性があります。
「言うことを聞かなければ許さない」などの発言は犯罪となる場合があります。
SNSへの誹謗中傷は民事・刑事双方の責任が問題となることがあります。
教科書や制服、スマートフォンなどを壊した場合には損害賠償の対象となる可能性があります。
金銭を要求したり、おごらせたりする行為は重大な犯罪となる場合があります。
写真や動画を無断で公開・拡散する行為も法的問題となることがあります。
内容によっては学校の指導だけでなく、警察への相談や損害賠償請求が検討されることもあります。
学校の対応に納得できない場合の対応
学校へ相談しても、「様子を見ましょう」「生徒同士で話し合ってください」と言われるだけで、十分な調査や対応が行われないケースがあります。
そのような場合には、一度相談しただけで諦める必要はありません。
- 学校へ書面で調査を求める
- 教育委員会へ相談する
- いじめ防止対策推進法に基づく対応を求める
- 重大事態に該当する場合は第三者調査を求める
- 専門家へ相談する
特に口頭だけでの相談では、「そのような話は聞いていない」「認識が違う」と後日説明されることもあります。
そのため、相談内容や学校へ求める対応は書面にまとめて提出し、回答も文書で求めることが望ましいでしょう。
文書で残すことにより、学校とのやり取りを客観的な記録として保存できます。
よくある質問
高校生本人が相談を嫌がっています。それでも学校へ相談してよいですか?
生命や身体、精神的健康への影響が懸念される場合には、保護者が学校へ相談することも重要です。本人の意思は尊重しつつ、安全確保を最優先に考える必要があります。
SNSだけの嫌がらせでもいじめになりますか?
学校生活に影響を与え、精神的苦痛を生じさせている場合には、SNS上だけの行為であってもいじめとして対応される可能性があります。
卒業間近でも対応してもらえますか?
卒業が近いことを理由に対応を行わないことは適切ではありません。卒業後にも影響が残る場合があるため、早めに相談することをおすすめします。
証拠がなくても相談できますか?
証拠がなくても相談は可能です。ただし、LINEやSNS、写真、日記などを残しておくことで、事実確認がより円滑になります。
高校生のいじめは早期対応が重要です
高校生のいじめは表面化しにくく、精神的負担が大きくなりやすい特徴があります。被害が長期間続く前に、学校への相談方法や証拠の整理、文書による申入れなど適切な対応を検討することが大切です。
いじめ防止対策室では、学校への申入書や要望書、経緯書などの文書作成に関するご相談も承っております。状況に応じた対応方法をご案内いたします。



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