いじめ防止対策推進法は、いじめの防止、早期発見、被害児童生徒への支援、加害児童生徒への指導、重大事態への対応などについて、国、地方公共団体、学校、保護者等の責務を定めた法律です。本記事では、同法の基本的な考え方と、学校に求められる対応を分かりやすく解説します。
いじめ防止対策推進法とは
いじめ防止対策推進法は、社会問題となった深刻ないじめ事案を背景として制定され、平成25年9月28日に施行されました。
この法律の目的は、いじめを単なる児童生徒同士のトラブルとして扱うのではなく、児童生徒の尊厳や教育を受ける権利を守るべき問題として位置付け、社会全体でいじめの防止等に取り組むことにあります。
法律では、いじめの防止だけでなく、早期発見、発生後の対応、被害児童生徒への支援、加害児童生徒への指導、保護者への助言、警察等の関係機関との連携、重大事態が発生した場合の調査などについて定めています。
学校は、いじめが発生してから対応するだけでは足りません。日頃からいじめを防止する体制を整備し、相談しやすい環境をつくり、兆候を早期に把握することが求められます。
法律上の「いじめ」の定義

「いじめ」とは、一般的な言葉ではなく、いじめ防止対策推進法第2条第1項によって法律上の定義が定められています。
この法律において「いじめ」とは、児童等に対して、当該児童等が在籍する学校に在籍している等当該児童等と一定の人的関係にある他の児童等が行う心理的又は物理的な影響を与える行為(インターネットを通じて行われるものを含む。)であって、当該行為の対象となった児童等が心身の苦痛を感じているものをいう。
この定義から分かるように、いじめに該当するかどうかは、暴力や犯罪行為に限られるものではありません。法律では、一定の人的関係、心理的又は物理的な影響、そして被害を受けた児童生徒が心身の苦痛を感じていることが重要な判断要素となります。
一定の人的関係とは
「一定の人的関係」とは、同じ学校や同じクラスの児童生徒だけを意味するものではありません。
- 同じ学校・学級の児童生徒
- 部活動やクラブ活動の仲間
- 委員会活動や学校行事で関わる児童生徒
- 塾や習い事で知り合った児童生徒
- 地域活動やスポーツクラブの仲間
- SNSやオンラインゲームなどで継続的な交流がある相手
このように、学校外で形成された関係であっても、一定の人的関係が認められる場合には、法律上のいじめに該当する可能性があります。
心理的・物理的な影響とは
法律では「心理的又は物理的な影響」と広く定められており、次のような行為が対象となる可能性があります。
悪口、無視、仲間外れ、脅し、からかい、嫌がらせ、SNS上での誹謗中傷など。
暴力、物を壊す行為、物を隠す・捨てる行為、金品の要求、危険な行為の強要など。
SNS、掲示板、グループチャット、動画配信サービス、オンラインゲーム等を利用した嫌がらせや誹謗中傷も含まれます。
被害者が心身の苦痛を感じていることが重要
法律上のいじめは、加害者の意図ではなく、被害を受けた児童生徒が心身の苦痛を感じているかどうかが重要な判断基準となります。
そのため、「冗談だった」「遊びのつもりだった」「相手も笑っていた」という加害者側の説明だけで、いじめではないと判断されるものではありません。
いじめに該当するかどうかは、一人の教員の判断ではなく、被害児童生徒の状況や継続性、周囲の事情などを踏まえ、学校が組織的に事実確認を行った上で判断することが求められています。
いじめ防止対策の基本理念
いじめ防止対策は、すべての児童生徒が安心して学校生活を送り、学習その他の活動に取り組めるようにすることを基本として行われます。
いじめは、被害を受けた児童生徒の心身に深刻な影響を及ぼすだけでなく、長期間にわたる不登校、学習機会の喪失、対人不安、自己肯定感の低下などにつながることがあります。そのため、学校には「いじめを受けた側にも問題があった」などと被害児童生徒へ責任を転嫁せず、安全確保と支援を優先する姿勢が求められます。
また、いじめは特定の児童生徒や学校だけで起こる特別な問題ではありません。どの児童生徒にも、いじめの被害者または加害者となる可能性があることを前提として、継続的な予防教育や相談体制の整備を進める必要があります。
国・学校・保護者等の責務
いじめ防止対策推進法では、いじめへの対応は学校だけの責任ではなく、国、地方公共団体、学校の設置者、学校、教職員、保護者、その他の関係者がそれぞれの立場で責務を果たし、相互に連携して取り組むことが求められています。
これは、いじめを早期に発見し、重大化を防止するためには、一つの機関だけではなく、社会全体で児童生徒を支える必要があるという考え方に基づいています。
国の責務(第5条)
国は、第三条の基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、いじめの防止等のための対策を総合的に策定し、及び実施する責務を有する。
国は、基本方針の策定や制度整備、調査研究、啓発活動など、全国的ないじめ防止対策を推進する責務を負っています。
地方公共団体の責務(第6条)
地方公共団体は、基本理念にのっとり、いじめの防止等のための対策について、国と協力しつつ、当該地域の状況に応じた施策を策定し、及び実施する責務を有する。
都道府県や市町村は、地域の実情に応じた施策を実施し、教育委員会、学校、警察、児童相談所その他の関係機関との連携体制を整備することが求められています。
学校の設置者及び学校の責務(第7条)
学校の設置者は、基本理念にのっとり、その設置する学校におけるいじめの防止等のために必要な措置を講ずる責務を有する。
学校及び学校の教職員は、基本理念にのっとり、当該学校に在籍する児童等の保護者、地域住民、児童相談所その他の関係者との連携を図りつつ、学校全体でいじめの防止及び早期発見に取り組むとともに、当該学校に在籍する児童等がいじめを受けていると思われるときは、適切かつ迅速にこれに対処する責務を有する。
学校及び学校の設置者には、いじめの防止だけでなく、早期発見、事実確認、被害児童生徒の保護、加害児童生徒への指導、保護者への説明などを組織的かつ迅速に行う責務があります。
学校が適切に対応できるよう、人員配置、研修、必要な支援や調査体制を整備します。
いじめの防止、早期発見、事実確認、被害者支援、加害者指導などを学校全体で組織的に実施します。
必要に応じて教育委員会、警察、児童相談所、医療機関等と連携して対応します。
保護者の責務(第9条)
保護者は、子の教育について第一義的責任を有するものであって、その保護する児童等がいじめを行うことのないよう、当該児童等に対し規範意識を養うための指導その他の必要な指導を行うよう努めるものとする。
保護者には、子どもがいじめを行わないよう適切に指導するとともに、学校が実施するいじめ防止対策や事実確認に協力することが求められています。
保護者に責務が定められていることを理由として、学校が対応を保護者任せにすることは認められません。学校内又は児童生徒間で発生したいじめについては、学校が主体となって事実確認、安全確保及び再発防止に組織的に取り組むことが法律上求められています。
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いじめ防止基本方針
国は、いじめの防止等のための対策を総合的かつ効果的に推進するため、基本方針を定めます。学校についても、国や地方公共団体の基本方針を参考にしながら、自校の実情に応じた「学校いじめ防止基本方針」を策定することが義務付けられています。
学校いじめ防止基本方針には、いじめを防止するための取組、相談窓口、早期発見の方法、いじめを把握した場合の対応手順、校内組織の役割、保護者や関係機関との連携方法などを具体的に定めることが重要です。
いじめについて学校へ相談する際は、学校のウェブサイト等に掲載されている「学校いじめ防止基本方針」を確認することで、学校が定めている相談方法や対応手順を把握できる場合があります。
学校に求められる基本的な施策
いじめ防止対策推進法では、学校は単にいじめが発生した後に対応するだけではなく、日頃からいじめを未然に防止するための体制を整えることが求められています。
そのため、学校には道徳教育や人権教育の充実、教職員研修の実施、児童生徒が安心して相談できる環境づくり、保護者との情報共有など、継続的な取組を実施する責任があります。
他人を尊重する心や思いやりを育て、いじめを許さない意識を醸成します。
教職員だけでなく、スクールカウンセラー等も活用し、相談しやすい環境を整えます。
SNSやネット上の誹謗中傷への対応や情報モラル教育も重要な施策です。
法律では、いじめを発見してから対応するだけではなく、「いじめを起こさせない学校づくり」が基本的な考え方とされています。
学校には「いじめ対策組織」の設置が義務付けられています
学校は、いじめの防止や早期発見、適切な対応を実効的に行うため、法律により「学校におけるいじめの防止等の対策のための組織」を設置することが義務付けられています。
学校は、当該学校におけるいじめの防止等に関する措置を実効的に行うため、当該学校の複数の教職員、心理、福祉等に関する専門的な知識を有する者その他の関係者により構成されるいじめの防止等の対策のための組織を置くものとする。
この組織は、校長、教頭、学年主任、担任、養護教諭、生徒指導担当教員のほか、必要に応じてスクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカー、弁護士、警察関係者などの専門家を加えて構成されることがあります。
いじめ対策組織の主な役割
いじめに関する相談や通報を受け付け、学校内で情報を共有します。
被害児童生徒、加害児童生徒、関係児童生徒などから聞き取りを行い、客観的な事実を確認します。
被害児童生徒の安全確保、保護者への説明、加害児童生徒への指導などについて組織として方針を決定します。
このように、法律は「組織による対応」を原則としており、担任教員や一部の教職員だけで対応を完結させることは想定していません。
「担任だけが把握していた」「管理職に報告されていなかった」「いじめ対策組織に情報が共有されていなかった」といった対応は、重大事態への発展や対応の遅れにつながるおそれがあります。学校は、いじめを認知した場合には速やかに組織で情報を共有し、学校全体として対応することが求められています。
いじめの早期発見が重要です
いじめは、表面化しにくいケースが少なくありません。そのため、学校には日頃から児童生徒の様子を把握し、小さな変化を見逃さないことが求められます。
定期的なアンケート調査、個別面談、教職員間の情報共有、保護者との連携などを通じて、いじめの兆候を早期に把握することが重要です。
- 相談を受ける
本人や保護者、友人などから相談を受けた場合は真摯に受け止めます。
- 速やかに情報共有する
担任だけで抱え込まず、校内組織へ速やかに報告します。
- 事実確認を開始する
被害・加害双方や関係者から聞き取りを行い、客観的な事実を整理します。
- 安全確保を優先する
調査中であっても、被害児童生徒の安全を最優先に対応します。
被害児童生徒への支援
いじめ防止対策推進法では、学校は、いじめが確認された場合又はいじめが疑われる場合には、被害児童生徒の生命・身体・心身の安全を最優先に考え、必要な保護及び支援を行うことが求められています。
学校は、前項の規定による事実の有無の確認によりいじめがあったことが確認された場合には、いじめをやめさせ、及びその再発を防止するため、心理、福祉等に関する専門的な知識を有する者の協力を得つつ、いじめを受けた児童等又はその保護者に対する支援その他の適切な措置を講ずるものとする。
学校には、単にいじめを止めるだけでなく、被害児童生徒が安心して学校生活を送ることができるよう、継続的な支援を行うことが法律上求められています。
主な支援内容
担任や養護教諭による継続的な面談、スクールカウンセラー等による心理的ケアを行います。
教室や座席の変更、別室での学習、登下校時の見守りなど、安心して学校生活を送るための配慮を行います。
調査状況や学校の対応方針を適切に説明し、保護者と連携しながら継続的な支援を行います。
安全確保は調査よりも優先されます
学校は、「まだ事実関係が確定していない」「双方の言い分が異なっている」といった理由だけで、被害児童生徒の保護を先送りにすることは適切ではありません。
事実確認を進めながらも、被害児童生徒が安心して学校生活を送ることができるよう、必要な保護措置や支援措置を速やかに講じることが重要です。
いじめへの対応では、被害児童生徒の生命・身体・心身の安全を確保することが最優先となります。そのため、調査と並行して安全確保や心理的支援を実施することが、いじめ防止対策推進法の趣旨にも沿った対応といえます。
加害児童生徒への指導と保護者への助言
いじめ防止対策推進法では、学校は、いじめが確認された場合には、被害児童生徒への支援だけでなく、加害児童生徒に対する適切な指導及びその保護者への助言を行い、いじめの再発を防止するために必要な措置を講じなければならないとされています。
学校は、前項の規定による事実の有無の確認によりいじめがあったことが確認された場合には、いじめをやめさせ、及びその再発を防止するため、心理、福祉等に関する専門的な知識を有する者の協力を得つつ、いじめを受けた児童等又はその保護者に対する支援及びいじめを行った児童等に対する指導又はその保護者に対する助言その他の適切な措置を講ずるものとする。
学校が行う指導の目的は、単に加害児童生徒を処罰することではありません。なぜその行為がいじめに当たるのかを理解させ、自らの行動を振り返らせるとともに、被害児童生徒の心情を理解させ、再発を防止することが重要です。
加害児童生徒への主な指導内容
行為の内容や経緯を確認し、いじめが他人の権利を侵害する行為であることを理解させます。
継続的な面談や生活指導を行い、同様の行為を繰り返さないよう支援・指導します。
保護者と情報を共有し、家庭においても適切な指導や見守りが行われるよう助言します。
また、事案の内容によっては、教育委員会、児童相談所、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカー、福祉機関等と連携しながら、継続的な支援や指導を行うこともあります。
暴行、傷害、脅迫、恐喝、強要、器物損壊、名誉毀損、侮辱などの犯罪に該当する可能性がある事案では、学校だけで対応を完結させるのではなく、警察その他の関係機関と適切に連携することが求められます。
重大事態とは
いじめ防止対策推進法では、通常のいじめ事案とは区別して、児童生徒に重大な被害が生じた場合又はその疑いがある場合を「重大事態」と定めています。
学校の設置者又はその設置する学校は、次に掲げる場合には、その事態(以下「重大事態」という。)に対処し、及び当該重大事態と同種の事態の発生の防止に資するため、速やかに、当該学校の設置者又はその設置する学校の下に組織を設け、質問票の使用その他の適切な方法により当該重大事態に係る事実関係を明確にするための調査を行うものとする。
法律では、重大事態に該当する代表的なケースとして、次の二つが定められています。
自殺や自殺未遂、重傷、精神疾患の発症、多額の金品被害など、重大な結果が生じた疑いがある場合です。
いじめにより相当期間学校を欠席している、又は欠席を余儀なくされている疑いがある場合です(年間30日程度が一つの目安とされています。)。
「重大事態である」と確定していなくても、その疑いが認められる場合には、重大事態として調査を開始する必要があります。
学校が「重大事態ではない」と独自に結論付けて調査を行わないことは、法律の趣旨に反するおそれがあります。重大事態が疑われる場合には、速やかに必要な調査を開始しなければなりません。
重大事態が発生した場合の調査
重大事態が発生した場合には、学校又は学校の設置者は、速やかに調査組織を設置し、事実関係を明確にするための調査を実施しなければなりません。
学校の設置者又はその設置する学校は、重大事態に対処し、及び当該重大事態と同種の事態の発生の防止に資するため、速やかに組織を設け、質問票の使用その他の適切な方法により当該重大事態に係る事実関係を明確にするための調査を行うものとする。
調査の目的は、加害者を処分することだけではありません。事実関係を客観的に明らかにし、被害児童生徒の安全を確保するとともに、同様の事態の再発を防止することにあります。
- 重大事態を把握する
学校又は学校の設置者は、重大事態又はその疑いを認識した時点で、速やかに法に基づく対応を開始します。
- 調査組織を設置する
公正性・中立性を確保するため、必要に応じて弁護士、医師、心理・福祉の専門家など外部有識者を含めた調査組織を設置します。
- 事実関係を調査する
被害児童生徒、加害児童生徒、関係児童生徒、教職員等から聞き取りを行い、資料の収集や質問票の活用などにより客観的な事実を確認します。
- 再発防止策を講じる
調査結果を踏まえ、被害児童生徒への支援、安全確保、学校の指導体制の見直しなど、再発防止のための具体的な改善策を実施します。
重大事態調査は、責任追及だけを目的とするものではありません。事実を客観的に明らかにし、被害児童生徒の安全を確保するとともに、学校が同様の重大事態を繰り返さないための改善につなげることが重要な目的とされています。
被害児童生徒・保護者への情報提供
重大事態について調査が行われた場合には、学校又は学校の設置者は、被害児童生徒及びその保護者に対し、調査によって明らかになった事実やその他必要な情報を適切に提供する義務があります。
学校の設置者又はその設置する学校は、前項の規定による調査を行ったときは、当該調査に係るいじめを受けた児童等及びその保護者に対し、当該調査に係る重大事態の事実関係等その他の必要な情報を適切に提供するものとする。
この規定は、被害児童生徒や保護者が調査の状況や結果を把握し、適切な支援を受けられるようにすることを目的としています。そのため、学校は調査の経過や確認された事実について、誠実かつ丁寧に説明することが求められます。
提供される主な情報
調査の実施状況、聞き取りの対象、今後の予定などについて、必要に応じて説明が行われます。
調査により判明した事実関係や学校の認定内容について、被害児童生徒及び保護者へ説明されます。
学校が講じる安全確保措置や再発防止策について説明が行われます。
一方で、情報提供に当たっては、加害児童生徒や第三者の個人情報、プライバシーなどにも十分配慮する必要があります。そのため、提供される内容には一定の制限が設けられることがあります。
学校は、「調査中なので説明できない」と一切説明を行わないのではなく、調査の進捗や判明した事実、今後の対応について、可能な範囲で継続的かつ適切に情報を提供することが法律上求められています。
再調査制度について
重大事態について学校又は学校の設置者が調査を実施した後であっても、その調査結果に疑義がある場合などには、地方公共団体の長が再調査を行うことができる制度が設けられています。
地方公共団体の長は、前項の報告を受けた場合において、当該報告に係る重大事態への対処又は当該重大事態と同種の事態の発生の防止のため必要があると認めるときは、附属機関を設けて調査を行う等の方法により、第28条第1項の規定による調査の結果について調査を行うことができる。
再調査制度は、学校や教育委員会が行った調査の内容を改めて検証し、事実関係をより客観的に明らかにすることを目的としています。
再調査が行われる主なケース
十分な聞き取りが行われていない、重要な資料が調査対象となっていないなど、調査方法に問題がある場合です。
当初の調査後に新たな証拠や証言が見つかり、再度の検証が必要となる場合です。
調査結果に対する疑問が残る場合などに、中立的な立場から再調査が実施されることがあります。
再調査の結果を踏まえ、地方公共団体は必要に応じて学校への指導や再発防止策を講じ、同様の重大事態を防止するための改善に取り組むことが求められています。
まとめ
いじめ防止対策推進法は、単にいじめを禁止するだけではなく、いじめの防止、早期発見、迅速な対応、重大事態への調査及び再発防止までを体系的に定めた法律です。
法律では、国、地方公共団体、学校の設置者、学校、保護者それぞれの責務を明確にするとともに、学校には「いじめ対策組織」の設置、組織的な対応、被害児童生徒への支援、加害児童生徒への指導、重大事態発生時の調査など、多くの義務が課されています。
また、重大事態では調査結果を被害児童生徒及び保護者へ適切に提供し、必要に応じて地方公共団体の長による再調査制度も設けられており、公正性・透明性の確保が図られています。
学校の対応に疑問を感じた場合には、いじめ防止対策推進法や学校のいじめ防止基本方針を確認し、事実を整理した上で学校、教育委員会又は専門家へ相談することが重要です。法律の内容を理解しておくことは、被害児童生徒の権利を守り、適切な解決を図るための第一歩となります。
よくある質問
学校が「いじめではない」と判断した場合でも相談できますか?
はい。学校がいじめではないと判断している場合でも、その判断に疑問があるときは、改めて事実確認や対応を求めることができます。
いじめに該当するかどうかは、行為をした側の意図だけではなく、行為を受けた児童生徒が心身の苦痛を感じているかどうかを踏まえて判断されます。「冗談だった」「悪気はなかった」「遊びの範囲だった」という説明だけで、直ちにいじめではないと判断されるものではありません。
学校へ相談する際は、いつ、どこで、誰から、どのような行為を受けたのか、その結果、どのような心身の変化や学校生活への影響が生じているのかを整理して伝えることが重要です。
学校の対応が不十分である場合には、校長、学校の設置者、教育委員会、私立学校を所管する部署、第三者相談機関などへの相談も検討できます。
本人が先生に相談したがらない場合はどうすればよいですか?
本人が相談を拒んでいる場合には、無理に話をさせることで心理的な負担が大きくなることがあります。まずは、本人が相談したくない理由を確認し、安心して話せる環境を整えることが大切です。
「相手に知られるのが怖い」「仕返しを受けるかもしれない」「大ごとにしたくない」「先生に話しても解決しないと思っている」など、相談をためらう理由はさまざまです。
保護者から学校へ相談する場合には、本人が相談を望んでいないことや、加害児童生徒に相談内容が直ちに伝わることを不安に感じていることも併せて説明し、本人の安全と心情に配慮した対応を求めるとよいでしょう。
SNS上の嫌がらせも法律上のいじめに該当しますか?
はい。SNS、掲示板、グループチャット、メッセージアプリ、オンラインゲームなどを通じて行われる誹謗中傷や嫌がらせも、法律上のいじめに該当する可能性があります。
具体的には、悪口の投稿、無断で撮影した写真や動画の公開、グループからの排除、なりすまし、秘密の暴露、侮辱的な画像の拡散、複数人による継続的なメッセージ送信などが考えられます。
投稿やメッセージは削除される可能性があるため、発見した場合には、画面全体が分かるスクリーンショットを保存し、投稿日時、アカウント名、URL、送信者、閲覧者などを記録しておくことが重要です。
学校外で起きた行為も学校に相談できますか?
はい。登下校中、塾、習い事、部活動の遠征先、地域活動、インターネット上など、学校の敷地外で行われた行為であっても、関係する児童生徒が同じ学校に在籍している場合などには、学校へ相談することができます。
法律上の「一定の人的関係」は、同じ学級や学校内だけに限定されるものではありません。学校生活を通じて関係がある児童生徒間の行為であれば、学校外で発生した場合でも、いじめとして対応が必要となることがあります。
ただし、事案によっては、学校だけでなく、教育委員会、警察、児童相談所、インターネット上の相談窓口などとの連携が必要になる場合があります。
証拠がなくても学校に相談できますか?
はい。録音、動画、メッセージなどの明確な証拠がない場合でも、学校に相談することはできます。
いじめは周囲から見えない場所で行われることも多く、最初から十分な証拠がそろっているとは限りません。本人の申告や保護者からの相談をきっかけとして、学校が関係者への聞き取りや事実確認を行うことが求められます。
相談前には、本人の記憶が新しいうちに、発生日時、場所、相手、具体的な行為、目撃者、先生への相談歴、欠席や体調不良などの影響を時系列で記録しておくと、学校へ状況を伝えやすくなります。
学校へ相談するときは、口頭と書面のどちらがよいですか?
まずは口頭で相談することもできますが、重大な内容や継続的ないじめについては、書面やメールでも相談内容を残しておくことが望ましいと考えられます。
書面には、いじめの内容、発生時期、現在までの経過、本人への影響、学校に求める対応などを簡潔に記載します。感情的な表現を重ねるよりも、確認できる事実を時系列で整理することが重要です。
面談を行った場合には、面談日時、出席者、学校からの説明、約束された対応、次回の連絡予定などを記録しておきましょう。後日、認識の食い違いが生じることを防ぎやすくなります。
学校は相談を受けた後、どのような対応をする必要がありますか?
学校は、相談を受けた教職員だけで問題を抱え込むのではなく、校内のいじめ対策組織へ情報を共有し、組織的に対応する必要があります。
具体的には、被害児童生徒の安全確保、本人や保護者からの聞き取り、関係児童生徒や教職員への事実確認、加害児童生徒への指導、保護者への説明、再発防止策の検討などを行います。
事実関係がすべて明らかになっていない段階であっても、被害児童生徒への接触を避ける、座席や教室を調整する、登下校に配慮するなど、必要な安全措置を先に講じることが重要です。
加害児童生徒にはどのような措置が取られますか?
加害児童生徒に対しては、行為の内容や悪質性、継続性、被害の程度などを踏まえ、学校による指導や再発防止のための措置が行われます。
指導の目的は、単に罰を与えることではなく、自らの行為が相手に与えた影響を理解させ、同様の行為を繰り返さないようにすることにあります。必要に応じて、保護者への助言や関係機関との連携も行われます。
暴行、傷害、恐喝、脅迫、強要、窃盗、器物損壊、名誉毀損など、犯罪に該当する可能性がある場合には、警察への相談や通報が検討されることもあります。
相手の保護者と直接話し合ってもよいですか?
相手の保護者と直接話し合うこと自体が直ちに禁止されるわけではありませんが、感情的な対立や事実関係の混乱を招く可能性があるため、慎重な対応が必要です。
特に、学校が事実確認を行っている途中に直接連絡すると、相手方から圧力を受けたと主張されたり、児童生徒同士の関係がさらに悪化したりすることがあります。
まずは学校を通じて事実確認と対応を求め、必要がある場合には、学校関係者や第三者を交えた話し合いを検討する方が安全です。
重大事態になるまで学校は動かないのでしょうか?
いいえ。学校は、いじめを認知した時点で、速やかに事実確認、情報共有、安全確保、被害児童生徒への支援、加害児童生徒への指導などを開始する必要があります。
重大事態は、生命、身体、精神、財産に重大な被害が生じた疑いがある場合や、いじめによって相当期間の欠席を余儀なくされている疑いがある場合に、より厳格な調査を行うための制度です。
重大事態に該当しない場合であっても、通常のいじめ事案として学校が対応しなければならないことに変わりはありません。
何日欠席すれば重大事態になりますか?
欠席日数だけで機械的に判断されるものではありません。一定の日数が一つの目安となることはありますが、本人の状況や欠席に至った経緯、いじめとの関係などを個別に確認する必要があります。
連続した長期欠席だけでなく、遅刻や早退の増加、保健室登校、別室登校、特定の授業や部活動への参加困難なども、学校生活への重大な影響として考慮される場合があります。
保護者や本人から重大な被害が生じているとの申立てがあった場合には、学校はその申立てを軽視せず、重大事態の可能性を踏まえて確認する必要があります。
重大事態の調査結果について説明を受けられますか?
学校または学校の設置者が重大事態の調査を行った場合には、被害児童生徒およびその保護者に対して、調査によって明らかになった事実関係や必要な情報を適切に提供することが求められます。
ただし、加害児童生徒や第三者の個人情報、プライバシー、今後の教育的配慮などとの関係から、すべての情報が無制限に開示されるとは限りません。
説明が不十分であると感じる場合には、調査方法、確認された事実、判断の根拠、再発防止策などについて、書面による説明を求めることも検討できます。
学校の対応が遅い場合はどうすればよいですか?
まずは、学校へ相談した日時、相談相手、伝えた内容、学校から示された回答、今後の対応予定を整理しましょう。その上で、いつまでに、どのような対応を行う予定なのかを具体的に確認します。
担任だけに相談している場合には、学年主任、教頭、校長、校内のいじめ対策組織などへの情報共有を求めることも重要です。
それでも対応が進まない場合には、公立学校であれば教育委員会、私立学校であれば学校法人や所管部署への相談を検討できます。危険が差し迫っている場合や犯罪に該当する可能性がある場合には、警察への相談も必要です。
転校すれば問題は解決しますか?
転校によって被害児童生徒の安全や心理的負担が改善される場合はありますが、転校だけで問題が解決したことになるとは限りません。
被害を受けた側が学校を離れざるを得ない状況は、本人に大きな負担を与える可能性があります。転校を検討する場合でも、現在の学校で起きた事実の確認、被害への支援、記録の作成、再発防止などを併せて求めることが重要です。
本人の意思や心身の状態を尊重し、学校、教育委員会、医療機関、スクールカウンセラーなどとも相談しながら判断することが望まれます。
警察へ相談するのは大げさではありませんか?
暴行、傷害、恐喝、脅迫、強要、窃盗、器物損壊、性的な行為、インターネット上の悪質な投稿など、犯罪に該当する可能性がある場合には、警察への相談を検討することは大げさではありません。
学校内の問題であっても、学校だけで対応しなければならないわけではありません。本人の生命や身体に危険がある場合、金品の要求が続いている場合、重大な暴力がある場合などには、早急な相談が必要です。
緊急性が高い場合には警察へ通報し、緊急ではない場合でも、地域の警察署や少年相談窓口へ相談することができます。



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