いじめの現状について文部科学省のデータをかみ砕いて説明

いじめの現状について文部科学省のデータをかみ砕いて説明 いじめの現状
文部科学省データから見るいじめの現状

いじめは「一部の学校だけで起きる特別な問題」ではありません。文部科学省の調査を見ると、いじめの認知件数は非常に多く、特に小学校で多く確認されています。本記事では、文部科学省の資料をもとに、数字の意味をできるだけ分かりやすく整理します。

目次

  1. 文部科学省のデータで見るいじめの全体像
  2. いじめの認知件数が増えている理由
  3. 小学校でいじめが多い理由
  4. いじめの内容で多いもの
  5. ネットいじめ・SNSいじめの増加
  6. 重大事態とは何か
  7. 保護者がデータから考えるべきこと
  8. 学校対応で大切な視点
  9. よくある質問

令和3年度の文部科学省のデータで見るいじめの全体像

文部科学省の令和3年度調査では、小学校・中学校・高等学校・特別支援学校におけるいじめの認知件数は、合計615,351件とされています。令和2年度は517,163件であったため、98,188件、割合にして19.0%増加しています。

この数字だけを見ると、「いじめが急激に悪化している」と感じる方も多いと思います。しかし、いじめの統計を見るときには、単純に件数が増えたかどうかだけで判断するのではなく、「学校がいじめをきちんと認知できているか」という視点も重要です。

いじめの認知件数とは、学校がいじめとして把握した件数です。つまり、実際にいじめがあっても、学校が把握していなければ認知件数には入りません。そのため、認知件数が少ない学校が必ずしも安全とは限らず、逆に、認知件数が多い学校の方が、小さなサインを拾えている可能性もあります。

いじめのデータを見るときは、「件数が多い=悪い学校」と単純に判断するのではなく、「いじめを見逃さず、早期に把握できているか」を見ることが重要です。

いじめの認知件数が増えている理由

いじめの認知件数は、平成25年度の185,803件から、令和3年度には615,351件まで増加しています。数字だけを見ると大きな増加ですが、この背景には、いじめ防止対策推進法の施行後、学校がいじめを積極的に認知するよう求められてきたことがあります。

以前は、学校側が「これは子ども同士のトラブル」「一時的なけんか」「悪ふざけ」と捉えてしまい、いじめとして扱われないケースもありました。しかし現在は、被害を受けた児童生徒が心身の苦痛を感じている場合には、広くいじめとして捉える考え方が重視されています。

そのため、いじめの認知件数が増えていることは、単にいじめが増えたという面だけでなく、学校が小さな段階で把握しようとしている結果ともいえます。

ただし、認知しただけで終わってしまっては意味がありません。大切なのは、認知後にどのような調査を行い、どのように被害児童生徒を守り、どのように再発防止を図ったかです。

小学校でいじめが多い理由

令和3年度の認知件数を見ると、小学校が500,562件、中学校が97,937件、高等学校が14,157件、特別支援学校が2,695件となっています。全体の多くを小学校が占めていることが分かります。

小学校で多い理由としては、子ども同士の距離が近く、クラス単位で長い時間を過ごすこと、言葉による表現や感情のコントロールが未成熟であること、遊びやふざけ合いの中で相手を傷つけてしまうことなどが考えられます。

また、小学校では、からかい、悪口、仲間はずれ、軽く叩く、遊ぶふりをして蹴るといった行為が、日常的な人間関係の中で見えにくく発生することがあります。本人が「嫌だ」と言えなかったり、周囲が「よくあること」と受け止めたりすると、対応が遅れてしまうことがあります。

小学生のいじめは、本人がうまく説明できないこともあります。「学校に行きたくない」「お腹が痛い」「物がなくなる」「急に元気がない」といった変化がある場合は、早めに状況を確認することが大切です。

いじめの内容で多いもの

いじめの内容で多いもの

文部科学省の資料では、いじめの態様として最も多いものは、「冷やかしやからかい、悪口や脅し文句、嫌なことを言われる」という類型です。これは小学校、中学校、高等学校、特別支援学校のいずれでも多く見られます。

いじめというと、暴力や物を壊す行為をイメージされる方もいます。しかし、実際には、言葉によるいじめが非常に多いのが現状です。悪口、あだ名、からかい、陰口、脅し文句、人格を否定する発言などは、外から証拠が見えにくい一方で、子どもの心に深い傷を残すことがあります。

次に多い類型として、小学校や中学校では「軽くぶつかられる」「遊ぶふりをして叩かれる、蹴られる」といった行為もあります。加害側が「遊びだった」「ふざけていただけ」と説明することもありますが、被害を受けた児童生徒が苦痛を感じていれば、いじめとして考える必要があります。

言葉のいじめ

悪口、からかい、脅し文句、嫌なあだ名、人格否定など。

集団でのいじめ

仲間はずれ、無視、グループから外す、孤立させる行為など。

身体的ないじめ

叩く、蹴る、押す、ぶつかる、遊びを装った暴力など。

ネットいじめ・SNSいじめの増加

高等学校では、「パソコンや携帯電話等で、ひぼう・中傷や嫌なことをされる」という類型が比較的多くなっています。いわゆるネットいじめ、SNSいじめです。

文部科学省の資料では、パソコンや携帯電話等によるひぼう・中傷等の件数は、令和3年度で全体21,900件とされています。平成26年度は7,898件であったため、長期的に見ると大きく増えていることが分かります。

ネットいじめの特徴は、学校内だけで完結しないことです。LINE、Instagram、X、TikTok、匿名掲示板、グループチャットなどを通じて、学校外の時間にも被害が続く場合があります。また、投稿やメッセージが拡散されると、本人の精神的負担は非常に大きくなります。

さらに、ネット上のいじめは証拠が残りやすい一方で、削除されると確認が難しくなる場合もあります。そのため、スクリーンショット、URL、投稿日時、アカウント名、やり取りの流れを早めに保存しておくことが重要です。

SNSいじめでは、感情的に返信する前に、証拠を保存することが大切です。削除、ブロック、学校への相談、警察相談、専門家への相談などは、状況を整理したうえで進める必要があります。

重大事態とは何か

いじめの中でも、特に深刻なものは「重大事態」として扱われます。文部科学省の資料では、令和3年度の重大事態の発生件数は705件とされています。前年度は514件であり、こちらも増加しています。

重大事態には、大きく分けて2つの類型があります。1つ目は、いじめにより児童生徒の生命、心身または財産に重大な被害が生じた疑いがある場合です。2つ目は、いじめにより相当の期間、学校を欠席することを余儀なくされている疑いがある場合です。

ここで重要なのは、「疑いがある」段階で重大事態として考える必要があるという点です。学校側が完全に事実を確認してからではなく、重大な被害や長期欠席につながっている可能性がある場合には、調査の対象として扱うことが求められます。

保護者としては、子どもが不登校になっている、心身に大きな不調が出ている、診断書が出ている、自傷をほのめかしている、学校生活に戻れないほどの影響が出ている場合には、単なるトラブルとしてではなく、重大事態に該当する可能性を意識して対応する必要があります。

「学校が重大事態と言っていないから重大ではない」とは限りません。保護者側から、事実関係、欠席状況、心身の変化、診断書、相談記録などを整理して、学校に正式な対応を求めることも重要です。

保護者がデータから考えるべきこと

文部科学省のデータから分かるのは、いじめは決して珍しい問題ではないということです。小学校から高等学校まで、どの段階でも起こり得ます。また、言葉によるいじめ、仲間はずれ、軽い暴力、SNS上の誹謗中傷など、形もさまざまです。

そのため、保護者がまず意識すべきことは、「いじめかどうかを家庭だけで判断しない」ことです。子どもが苦痛を感じている場合には、早めに記録を取り、学校に相談し、必要に応じて書面で対応を求めることが重要です。

特に、口頭相談だけで終わってしまうと、後から「いつ、誰に、何を相談したのか」が曖昧になることがあります。相談日、相手の先生、話した内容、学校側の回答、次回対応予定などは、メモとして残しておくとよいでしょう。

  1. 子どもの話を否定せずに聞く
    まずは、事実関係を問い詰めるよりも、本人が何に苦痛を感じているのかを確認します。
  2. 時系列で整理する
    いつ、どこで、誰から、何をされたのかを、分かる範囲で整理します。
  3. 証拠を保存する
    LINE、SNS、写真、動画、録音、学校からの文書、診断書、欠席記録などを保存します。
  4. 学校に具体的な対応を求める
    事実確認、加害側への指導、再発防止、別室対応、見守り体制などを具体的に求めます。

学校対応で大切な視点

いじめ問題では、学校と保護者の間で認識の違いが生じることがあります。保護者は「いじめ」と考えているのに、学校側が「トラブル」「けんか」「本人同士の問題」と説明する場合です。

しかし、いじめの判断では、加害側の意図だけでなく、被害を受けた児童生徒が心身の苦痛を感じているかが重要です。加害側が「ふざけただけ」と言っても、被害者が苦痛を感じ、継続的な不安や登校困難につながっている場合には、軽く扱うべきではありません。

学校に対応を求める際には、感情的な抗議だけではなく、事実、証拠、要望を分けて伝えることが大切です。たとえば、「いつからどのような行為があるのか」「本人にどのような影響が出ているのか」「学校に何をしてほしいのか」を整理して伝えることで、対応の方向性が明確になります。

学校への要望は、「加害者を罰してほしい」という表現だけでなく、「安全に登校できる環境を整えてほしい」「事実確認をしてほしい」「再発防止策を示してほしい」と整理すると伝わりやすくなります。

文部科学省データをどう読むべきか

文部科学省のデータは、いじめが全国的にどの程度認知されているのか、どの学校種で多いのか、どのような態様が多いのかを知るうえで重要です。

ただし、統計はあくまで全体の傾向です。目の前の子どもが苦しんでいる場合、その問題は「615,351件のうちの1件」ではなく、その子にとっては生活全体に関わる重大な問題です。

データを見ることで、「うちだけの問題ではない」「学校に相談してよい問題である」「早期に記録を残すべき問題である」と理解することができます。いじめ問題では、早めに気づき、早めに整理し、早めに対応することが何より重要です。

よくある質問

いじめの認知件数が多い学校は危険な学校ですか?

必ずしもそうとは限りません。認知件数が多い学校は、小さないじめも把握しようとしている可能性があります。大切なのは、認知後にどのような対応をしているかです。

子ども同士のけんかといじめはどう違いますか?

一方が継続的に苦痛を感じている場合や、力関係の差がある場合、集団で一人を傷つけている場合などは、単なるけんかではなく、いじめとして考える必要があります。

SNSで悪口を書かれた場合もいじめになりますか?

はい。パソコンや携帯電話等による誹謗中傷や嫌がらせも、いじめの一類型として扱われます。投稿内容、日時、アカウント名、URL、スクリーンショットなどを保存しておくことが重要です。

学校に相談しても動いてくれない場合はどうすればよいですか?

口頭相談だけでなく、書面で事実関係と要望を整理して提出する方法があります。相談記録、証拠、欠席状況、診断書などを整理したうえで、学校長や設置者に対応を求めることも検討します。

重大事態かどうかは誰が判断するのですか?

学校や学校の設置者が判断する場面が多いですが、保護者側から重大事態に該当する可能性を指摘し、調査や説明を求めることも重要です。特に長期欠席や心身への重大な影響がある場合は注意が必要です。

まとめ

文部科学省のデータから見ると、いじめは全国で多数認知されており、特に小学校で多く確認されています。内容としては、悪口、からかい、仲間はずれ、軽い暴力、SNSでの誹謗中傷などが多く、いじめの形は多様化しています。

いじめの件数が増えている背景には、学校が積極的にいじめを認知するようになっている面もあります。しかし、認知するだけでは不十分です。被害児童生徒を守るためには、事実確認、証拠整理、再発防止、学校との継続的な協議が必要です。

お子様の様子に変化がある場合や、学校の対応に不安がある場合は、早めに記録を残し、必要に応じて書面による要望や専門家への相談を検討してください。

参考:文部科学省「いじめの現状について」及び令和3年度「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」

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